円応寺は鎌倉の中心を流れる滑川 (なめりがわ) の河口にあります。円応寺は閻魔寺とも言い、元々はこの橋の付近に建っていたのを元禄16年の大津波により移転しました。現在は建長寺総門前の道路斜め向かいにあり建長寺門外塔頭です。本堂だけの小さなお寺ですが、堂内に並ぶ十王像拝観等を楽しめる隠れた名所です。また寺内にお抹茶、こぶ茶もいただける茶屋もありますから、ゆっくりくつろげることと思います。
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閻魔大王像
閻魔大王像は本堂の中央に座している本尊で運慶作と言われています。運慶は死にかけて冥土へ行きました。そして、冥土の閻魔様の前に引き出されました。しかし「お前は仏像を彫るのがうまいから生き返らせてあげる。お前に限らず人々が少しでも罪を犯さないように怖い私の姿を彫りなさい。」と言われました。娑婆に戻った運慶がその姿を刻んだのがこの像だと言われています
十王像
が堂内に並びますが、彼らは地獄の裁判官です。人は死ぬと六道つまり天上、人間、修羅、畜生、餓鬼、地獄の中のひとつへ行くことになります。それは生前の行いにより決定しますが、7日毎に部門別に裁きます。初七日の秦広王は人の一生を巻物にして見ます。いわゆる書類審査です。二七日の初江王(現在は鎌倉国宝館に出陳中)は、三途の川を善人には浅瀬を、悪人には深瀬を渡らせます。向こう岸に奪衣婆(だつえば)さん(堂内に陳列)が待っていて、川を渡って来た人の服を木の枝に掛けます。この枝のしなり方により判定します。三七日は宋帝王で邪淫(じゃいん) の罪を、平たく言うと浮気とか不倫とかの男女の不正関係を審査します。四七日は五官王で愚痴ぼやき等の妄言を裁きます。そして五七日に最初の判決を下すのが閻魔様ですので、ここの閻魔大王像には念入りにお願いしておきましょう。六七日は変成王で再審をして罪の軽い人を少しでも救うようにします。七七日の四十九日に泰山王が人の生前の功罪に対して最終判決をします。四十九日の法要をきちんと行うのはこの為です。仏教には基本的に慈悲深い教えがあり、ここでも罪の重い人を少しでも救うようにします。百ヶ日、一周忌、三回忌に生前に親交のあった家族や友人が法要をしますが、その時にその人の隠れた長所を伝えます。それぞれ平等王、都市王、五道転輪王が裁きます。
「袖振り合うも他生の縁」
この言葉を私達はよく使います。前世が程々の行いだった私たちは、天上の次の世界、つまり「人間界」にいます。私達はこの「人間界」で多くの人々に出会うわけです。ところが、輪廻転生(りんねてんしょう) が仏教の教えなので、実は他の世界でも袖を振っていたこともあったでしょう、というのがこの言葉の意味です。今生の縁を大事にして、程々の行いで再び人間の世界でお会いしたいものです。